長崎地方裁判所 平成10年(ワ)118号 判決 2000年9月20日
原告
全自交長崎県タクシー労働組合
右代表者執行委員長
楠田昭義
原告
甲野一郎
原告
乙原二郎
原告
丙山三郎
原告
丁川四郎
右5名訴訟代理人弁護士
熊谷悟郎
被告
中央タクシー有限会社
右代表者代表取締役
富崎満明
右訴訟代理人弁護士
山下誠
主文
一 被告が平成10年2月14日にした,原告甲野一郎に対する諭旨解雇処分,並びに原告乙原二郎,同丙山三郎及び同丁川四郎に対する,出勤停止期間を同日から同月27日までとする各出勤停止処分は,いずれも無効であることを確認する。
二 被告は,原告甲野一郎に対し,金66万円及びこれに対する平成10年2月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
三 被告は,原告乙原二郎,同丙山三郎及び同丁川四郎に対し,それぞれ,33万円及びこれに対する平成10年2月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
四 被告は,原告全自交長崎県タクシー労働組合に対し,金22万円及びこれに対する平成10年3月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
五 原告らのその余の請求を棄却する。
六 訴訟費用はこれを2分し,その1を原告らの,その余を被告の各負担とする。
七 この判決は,二ないし四項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第一申立て
一 原告ら
主文第一項と同旨のほか,以下の申立てをした。
1 被告は,原告甲野に対し,平成10年2月14日から毎月10日限り,1か月23万8026円の割合による金員を支払え。
2 被告は,原告甲野に対し,同原告を被告の乗務員として取り扱わなければならない。
3 被告は,原告甲野に対し232万3825円,同乙原に対し70万5472円,同丙山に対し69万9640円,同丁川に対し69万5596円,及びこれに対する平成10年2月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 被告は,原告タクシー労組に対し,240万円及びこれに対する平成10年3月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5 訴訟費用は被告の負担とする。
6 仮執行宣言
二 被告
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
第二事案の概要
本件は,被告が,後記駅入構規制に関するタクシー乗務員との労使紛争中,タクシー乗務員である原告甲野,同乙原,同丙山及び同丁川(以下,右原告らを一括して「原告ら4名」という。)に対してした,懲戒処分の効力について争われた事案である。原告ら4名は,懲戒処分の無効確認を求め,かつ,懲戒処分が不当労働行為であることを理由に,不法行為による損害賠償として,それぞれ,慰謝料と,未払賃金,一時金及び弁護士費用相当の損害金の支払いを求め,原告甲野において,懲戒処分(諭旨解雇処分)が無効であることを前提に,タクシー乗務員としての取扱いを求めた。また,原告タクシー労組は,不当労働行為による団結権侵害を理由に,不法行為による損害賠償として,慰謝料と弁護士費用相当の損害金の支払いを求めた。なお,右各損害賠償請求について,原告ら4名(ただし,原告甲野の未払賃金相当損害金請求を除く。)は右懲戒処分の日から,原告タクシー労組は本訴状送達日の翌日から,それぞれ,民法所定の遅延損害金の支払いを求めた。
一 争いのない事実
(当事者)
1 原告タクシー労組は,昭和30年11月15日に結成された,長崎県内のタクシー会社に勤務する労働者約900名をもって組織されている労働組合であって,同原告には,組合員が雇用されているタクシー会社ごとに17の支部が組織され,被告においても,中央タクシー支部(以下「中央支部」という。)が組織されている。
2 原告ら4名は,いずれも,被告に雇用されてタクシー乗務員として勤務する者であり,かつ,中央支部に所属する組合員である。原告甲野は中央支部の教宣部長(前支部長)を,原告乙原は支部長を,原告丙山は副支部長を,原告丁川は書記長をそれぞれ務めている。
3 被告は,昭和27年11月14日,一般乗用旅客自動車運送事業等を営むことを目的として設立され,営業車を保有してタクシー営業を行っている。
(駅入構規制の経過)
1 被告は,ラッキータクシー及びエキマエタクシーとともに,駅入構権(JR長崎駅に到着する乗客を対象に,駅構内に営業車を乗り入れて待機し,駅構内にあるタクシー乗り場から順次乗車させることができる権利で,駅入構権を有しないタクシー会社の乗務員は同駅で乗客を乗せて営業することはできない。)を有し,昭和61年5月までは,駅入構について何らの規制もしていなかった。そのため,被告に雇用されている乗務員は,隔日2交代制勤務(乗務員をA,Bの2班に分けて隔日勤務させるもので,この勤務体制は現在でも変わっていない。)の乗務日において,全員が,流し営業のほかに,自由に駅構内営業を行っていた。
2 被告は,昭和61年6月1日から,駅構内営業につき,2勤務交代での入構規制(A,B両班を各2グループに分けて,グループごとに2乗務日ずつ駅入構を行う方法。以下「2班体制」という。)を始めた。右入構規制は,中央支部の要求により,同年7月18日から同年8月31日までの間と,昭和63年12月1日から平成元年5月31日までの間に,一旦,解除されたほかは,継続された。被告は,平成6年2月3日から,<1>3班体制(A,B両班を各3グループに分けて,各乗務日ごとに交代で駅入構を行う方法)で1班ずつが入構し,日曜祭日は2班が入構する,<2>駅構内タクシー乗り場テント下(5台が駐車可能)については,他に客待ち車のいないときにブリー入構とする,といった入構規制を実施したが,<1>については,数か月で2班体制に戻り,<2>については,同年4月4日,廃止された。
3 被告は,平成9年11月7日,「流し当番勤務者が連続して1乗務あたり走行キロ数285キロ以下の場合,売上高いかんにかかわらず駅入構を禁止し連続流し番とする。駅当番が連続して走行キロ数270キロを下回る場合も同様とする。」旨記載の「急告」と題する文書を掲示し,さらに,平成10年1月18日,「1月19日以降,入構は3班編成により行う。流し番285キロ,駅番275キロを下回った場合は次回の入構を禁止する。右に違背する乗務員に対しては,就業規則に照らして厳正に処分する。」旨記載の「駅入構に関する通達」と題する文書を掲示した。これに対し,中央支部は,駅入構規制は労使協議での合意に基づいて実施するよう求めたが,被告は,駅入構規制は労働条件の変更ではなく経営権に属する問題であって協議の必要はないとして,これを拒否し,同月26日,「1月19日より会社の指示した長崎駅入構基準に基づく駅入構が図られるよう指示する。従業員が本業務命令に反した場合は,就業規則に基づき,相応の処分を科する。」旨記載の「業務命令」と題する文書を掲示した(以下,右「業務命令」と前記「駅入構に関する通達」を一括して「本件業務命令」という。)。そこで,中央支部は,平成10年2月4日と5日の両日,職場集会を開催し,2班体制を継続することは駅の整理係を混乱させるからとして,被告による3班体制の強行実施に異議をとどめた上で,3班体制に移行することとした(以下,本項の紛争を「本件労使紛争」という。)。
(本件懲戒処分)
1 被告は,平成10年2月14日,原告甲野について諭旨解雇処分とし,原告乙原,同丙山及び同丁川について,出勤停止期間を同日から同月27日までとする出勤停止処分とした(以下,右各処分を一括して「本件懲戒処分」といい,個別には「本件諭旨解雇処分」「本件出勤停止処分」という。)。
2 本件諭旨解雇処分の懲戒事由は,原告甲野の行為が,被告の就業規則(以下「本件就業規則」という。)100条(諭旨解雇,懲戒解雇)に規定する,「雇入れ(の)際,採用条件の要素となるような経歴を偽ったとき」(5号),「刑事上の罪に問われ,懲戒解雇することが適当と認めたとき」(7号),「社会的規範に反する行為(刑罰にはふれなくとも一般社会通念上当然してはならないこと)があって,会社,または従業員たる体面を汚したとき」(8号)「不用意な流言蜚語を行ったり,従業員をそそのかしたり,または煽動したとき」(30号),「業務上の指示,命令に不当に反抗して事業場の秩序を乱したとき」(32号),「故意に業務の能率を低下させ,または業務遂行の妨げになる行為をしたとき」(33号)にあたるというものであった。
3 本件出勤停止処分の懲戒事由は,原告乙原,同丙山及び同丁川の行為が,本件就業規則99条(譴責,減給,降格,乗務停止,出勤停止)に規定する,「業務上の指示,命令に従わないとき」(4号),「前各号のほか,就業規則,運転者服務規程,安全衛生規程,その他会社の諸規程,または交通法規,諸法令に違反したとき」(21号)にあたり,右21号については,特に,本件就業規則5条(服務規律)に規定する,「不用意な流言蜚語を行ったり,従業員をそそのかしたり,または煽動したりしてはならない」(14号),「生産意慾を阻害したり,または業務能率を低下させたり,あるい会社業務遂行の妨げになるような行為をしてはならない」(15号)にあたるというものであった。
二 争点
1 原告ら4名に懲戒事由があったか。
(被告の主張)
(一) 原告甲野の懲戒事由は,次のとおりである。
<1> 5号。入社(昭和58年)の前に,麻薬取締法違反により3年の禁錮刑を受けていたが(以下「A事実」という。),入社の際,この前科の存在を秘匿していた。
<2> 7号。昭和60年ころ,住吉において,Aタクシーの乗務員に暴力を振い,略式裁判による罰金刑を受けた(以下「B事実」という。)。昭和61年ころ,営業車に乗車してきた客に売春の斡旋をし,略式裁判による罰金刑を受けた(以下「C事実」という。)。
<3> 8号。平成7年4月19日,住吉の北消防署前における客待ち駐車について,Bタクシーの乗務員とトラブルを起こし,Bタクシー会社から抗議があって,今後,住吉地区で客待ち駐車をしないよう,また,他社とのトラブルを起こさないよう,警告と指導を行ったが,同年11月2日にも,長崎バスから苦情が寄せられるなど,その後も,北消防署前における客待ち駐車を続けていた(以下「D事実」という。)。
<4> 30号,32号,33号。本件労使紛争において,平成10年1月19日から同年2月5日まで,本件業務命令に違反し,組合員を扇動して社内秩序を乱した(以下「E事実」という。)。
(二) 原告乙原,同丙山及び同丁川の懲戒事由は,E事実である。
(原告らの主張)
AないしC各事実はあったが,D事実はなかった。
2 本件懲戒処分に手続違反があったか。
(原告らの主張)
原告タクシー労組及び中央支部と,被告との間には,平成元年12月9日に合意された「協定」(<証拠略>。これは労働協約である。)があって,その5項は,「前記改訂条文以外の条文については従来の協定内容とする。」と規定し,原告タクシー労組と,被告以外のタクシー会社8社との間で締結された,いわゆる「統一8社労働協約」(<証拠略>)を準用している。そして,「統一8社労働協約」30条は,「前条第1項の他懲戒及び解雇については就業規則に基づき会社と組合が協議して決める。」と規定しており,被告は組合と協議して本件懲戒処分を決めるべきであったが,被告は,中央支部と何らの協議も行わないまま,本件懲戒処分を強行した。したがって,本件懲戒処分は手続違反により無効である。
(被告の主張)
原告タクシー労組及び中央支部と,被告との間では,「統一8社労働協約」の中で必要と思われるものを取り出して,これを労働協約として成立させてきたにすぎないから,「協定」の5項によって,当然に,「統一8社労働協約」が被告に適用されるものではない。
3 本件懲戒処分は懲戒権の濫用又は不当労働行為か。
(原告らの主張)
(一) A事実について
A事実は,十数年も前の出来事である上,原告甲野の受けた採用面接は,運転免許証の確認と「今はタクシーは暇ですよ。頑張れますか。」という程度の発問にとどまり,過去の詳細な職歴や前科・前歴に関する質問はなく,被告は,採用にあたって,前科・前歴の存否に特段の関心を持っていなかった。そもそも,経営者の懲戒権は,企業秩序維持のための組織上の制裁であるから,労働者が入社前の前科・前歴を告知しなかったとしても,これが企業秩序に具体的な損害を発生させない限り,懲戒権の行使を認めるべきではないところ,被告にはそのような損害は生じていない。
(二) B,C各事実について
右各事実の当時,原告甲野は被告代表者に報告して謝罪したが,被告は,本件諭旨解雇処分までの12,3年の間,同原告を懲戒しなかった。
(三) E事実について
(1) 中央支部は,平成10年1月26日以降,2班体制による駅入構を差し控え,同年2月5日以降は3班体制による駅入構に移行しており,少なくとも,同年1月26日以降,駅入構に混乱は生じていない。
(2) そもそも,タクシー乗務員の給与・賞与は営業収入によって決定され,駅入構規制の問題は営業収入に直接影響する事柄であるから(本件労使紛争で問題となった2班体制から3班体制への移行は,駅入構回数を1か月あたり6.5回から4.33回に減少させる。),これを実施するかどうかは乗務員の労働条件にかかわるものであって,団体交渉事項である。また,昭和61年6月になされた初めての駅入構規制以来,10年以上にわたって,駅入構規制については労使間の協義を行って実施するということが繰り返されており,これが労使間の慣行として確立していた。本件労使紛争において,被告は,中央支部が団体交渉による協議を申し入れているのに,駅入構規制という労働条件の不利益変更をもたらす施策を,本件業務命令をもって一方的に実施したものであって,このような業務命令は,労働条件の労使対等決定の原則に違反するもので許されず,無効というべきである。
(四) 以上のとおり,本件懲戒処分は懲戒すべき理由もないのになされたものであるが,これは,タクシー労組及び中央支部に激しい敵意を抱いていた被告が,平成5年10月以降中央支部の支部長として中心的な活動を行ってきた原告甲野を被告から排斥するとともに,中央支部の正当な組合活動を抑圧するためであって,被告の意のままにならない中央支部に対する激しい敵対的労務政策の一環である。したがって,本件懲戒処分は懲戒権の濫用,又は不利益取扱い・支配介入の不当労働行為であって無効であり,また,右不当労働行為は,原告ら4名の労働者としての権利を侵害し,ひいては,原告タクシー労組の団結権を侵害したから,原告らに対し不法行為責任を負う。
(被告の主張)
(一) AないしC各事実について
被告は,当庁平成8年ワ第29号懲戒処分無効確認等請求事件(原告を本件原告タクシー労組,本件原告丁川及びIとし,被告を本件被告とする,不当労働行為を主たる争点とする訴訟)の係属中に,AないしC各事実を知ったが,これを理由に,直ちに,原告甲野を解雇することは新たな事件を抱え込むことになるなどの事情を考慮して,右係属事件の証拠調べが終了した平成10年2月10日の後に,本件諭旨解雇処分に踏み切ったものである。また,原告らは,原告甲野がB,C各事実を被告代表者に報告したと主張するが,そのような事実はない。
(二) E事実について
与えられた条件のもとで効率的に営業車を運行させ,乗務員及び会社にとって有利となる営業収入を図ることは,まさに経営者の責任に関することであり,この意味で,営業収入に直接影響する駅入構規制の問題は,経営権に属するものであって,団体交渉事項ではない。しかも,駅入構権そのものがJR九州と被告との契約に基づいて発生し,JR九州の都合により種々の制約を受けるのであって,この点からも,駅入構規制は団体交渉事項ではない。また,原告は,駅入構規制については労使間の協議を行うことが労使慣行として確立していたと主張するが,過去に行われた駅入構規制に関する労使協議は,被告が経営判断によって決定した駅入構規制を乗務員に周知徹底させることにより,混乱を防止するとの目的で実施されたにすぎないものであって,右のような労使慣行は存在しない。
4 原告らの損害額
(原告らの主張)
(一) 原告タクシー労組 合計240万円
(1) 団結権侵害による損害 200万円
(2) 弁護士費用 40万円
(二) 原告甲野 合計232万3825円(賃金を除く)
(1) 賃金 本件諭旨解雇処分の日である平成10年2月14日から1か月23万8026円ずつ
(2) 平成10年夏季一時金 25万8850円
(3) 同年冬季一時金 30万8550円
(4) 平成11年夏季一時金 25万6425円
(5) 慰謝料 120万円
(6) 弁護士費用 30万円
(三) 原告乙原 合計70万5472円
(1) 平成10年2月賃金の減額分 11万7972円
(2) 同年夏季一時金の減額分 8万7500円
(3) 慰謝料 40万円
(4) 弁護士費用 10万円
(四) 原告丙山 合計69万9640円
(1) 平成10年2月賃金の減額分 11万2140円
(2) 同年夏季一時金の減額分 8万7500円
(3) 慰謝料 40万円
(4) 弁護士費用 10万円
(五) 原告丁川 合計69万5596円
(1) 平成10年2月賃金の減額分 10万8096円
(2) 同年夏季一時金の減額分 8万7500円
(3) 慰謝料 40万円
(4) 弁護士費用 10万円
第三争点に対する判断
一 争点1について
1 A事実について
A事実があったことは当事者間に争いがない。本件就業規則100条5号は,「雇入れ(の)際,採用条件の要素となるような経歴を偽ったとき」と規定するが,その文言からすると,右規定は,労働者が面接担当者の質問に対して虚偽の事実を応答したことを懲戒事由としたものであって,質問がないのに自発的に申告をしなかったことは含まれないと解する。原告甲野が採用面接にあたって犯罪歴について質問を受けたか否かについては,面接担当者であった被告の村田課長が作成したとされるメモ(<証拠略>)に,「賞罰なし」との記載があるものの,右メモの作成経緯は不明であって(被告代表者は,右村田だけではなく,複数の者が記載したと供述する。),その趣旨及び記載時期とも確定できず,これだけから,原告甲野が犯罪歴につき質問を受けたものと認定することはできない。そして,他に,これを認めるに足りる証拠はないから,A事実があるからといって,本件就業規則100条5号の懲戒事由に該当するとはいえない。
2 B,C各事実について
B,C各事実があったことは当事者間に争いがない。本件就業規則100条7号は,「刑事上の罪に問われ,懲戒解雇することが適当と認めたとき」と規定しており,刑事上の罪に問われたことが当然に懲戒事由になるのではなく,犯罪の軽重等により,企業秩序維持のために解雇するのが適当と判断される場合に限定されている。B,C各事実は,必ずしも軽微な犯罪とはいえないが,いずれも罰金刑にとどまっていることや,本件懲戒処分当時には,処罰時から12,3年が経過し,刑の言渡しの効力も消滅していたこと(刑法34の2参照)を考慮すると,右各事実によって,原告甲野を諭旨解雇するのが適当であったとは認められない。したがって,B,C各事実があるからといって,本件就業規則100条7号に該当するとはいえない。
3 D事実について
被告の後田博営業部長(以下「後田」という。)作成の平成10年5月9日付け報告書(<証拠略>)には,「同月6・7日,関連業者に対する調査結果」として,D事実が記載されている。しかしながら,右報告書の記載内容を裏付ける証拠はなく,(証拠略)(椎場計之作成の報告書)に照らしても,右の(証拠略)だけでは,とうてい,D事実を認定することはできない。したがって,原告甲野に,本件就業規則100条8号の懲戒事由があるとはいえない。
4 E事実について
(一) 被告は,E事実が,原告甲野については本件就業規則30号,32号,33号の懲戒事由に,原告乙原,同丙山及び同丁川については本件就業規則99条4号,21号(5条14号,15号)の懲戒事由に,それぞれ該当すると主張する。しかし,本件業務命令が無効であれば,右原告らはこれに従う義務はないから,本件業務命令に従わないことは業務命令違反とはいえず,右の各懲戒事由には該当しないことになる。そこで,以下,この点を検討する。
(二) まず,本件業務命令の内容をなす駅入構規制が団体交渉事項であるかどうかをみるに,証拠(<証拠略>,原告丁川,被告代表者)によれば,以下の事実が認められる。
(1) 被告は営業車46台を保有し(右台数は,小型のみの台数で,他に中型と特大を各1台保有している。),約100名の乗務員が,A,B2班に分かれて交替で乗務し,それぞれが,3勤務―2公休―2勤務―2公休―5勤務―2公休のサイクルで乗務している。乗務員の賃金は,固定給と歩合給に分けられ,歩合給は,1か月の営業収入と,3万円に1か月の勤務数を乗じた金額との差額に,45パーセントを乗じた金額とされている。一時金(賞与)は,夏季と冬季の2回支給され,夏季については,6か月間の営業収入が234万円を超えた乗務員を有資格者とし,また,冬季については,同じく240万円を超えた乗務員を有資格者とし,いずれも,未資格者より高額の一時金が支給されている。
(2) 本件業務命令以前,乗務員の勤務につき,流し営業,客待ち営業いずれにも制約はなく,ただ,JR長崎駅の構内営業について,2班体制として規制されているだけであったが,本件業務命令は2班体制を3班体制とするもので,これにより,各乗務員の構内営業の回数は制限されることになった。
(3) 被告は,JR九州から,JR長崎駅での構内営業を承認され(すなわち,駅入構権),JR九州作成の「構内営業承認約款」においては,旅客サービスの向上と駅構内の秩序維持を義務付けられているものの,入構の頻度や営業車の台数については,何らの制約も受けていない。
以上の事実に基づいて検討するに,本件労使紛争における駅入構規制の問題は,駅入構権そのものの改廃を目的とするのではなく,その行使方法を問題とするものであって,被告に処分権限のない事項でないことは明らかであり,また,駅入構規制の可否は,被告主張に係る「経営権」事項とはいえるものの,同時に,本件業務命令によって駅入構規制が強化されると,営業収入の減少,ひいては,組合員の歩合給や一時金の減額につながる可能性があり,組合員の労働条件に重要な影響を及ぼすものである。したがって,本件労使紛争における駅入構規制の問題は,労働組合法6条にいう団体交渉事項にあたるというべきである。
これに対し,被告代表者は,本件業務命令による駅入構規制によって営業収入は増加すると供述する。しかしながら,右供述自体,裏付けを欠くものであるが(<証拠略>によっても,本件業務命令の実施により営業収入が増加したとはいえない。),そもそも,被告が駅入構権を保有しているのは,駅構内は実車の機会が多く営業収入の増加が見込まれるからと考えられる。そうすると,駅入構の頻度が減少することによって営業収入が減少することは大いにありうることであって,その可能性がある以上,団体交渉事項として,組合との協議によって解決するのは当然のことである。
(三) 次に,本件労使紛争の経過をみるに,前記第二の一の「駅入構規制の経過」と,証拠(<証拠・人証略>)によれば,以下の事実が認められる。
(1) 被告は,2班体制の駅入構規制を,さらに走行キロ数によって規制を強化しようと,平成9年11月7日,「流し当番勤務者が連続して1乗務あたり走行キロ数285キロ以下の場合,売上高いかんにかかわらず駅入構を禁止し連続流し番とする。駅当番が連続して走行キロ数270キロを下回る場合も同様とする。」旨記載の「急告」と題する文書を掲示した。そこで,原告乙原は,労使協議会の開催を申し入れたが,被告は,これに応じず,同年12月18日には,「走行キロ数による入構規制を無視して入構し続けている不心得な乗務員が数名存在する。処分につき検討しなければならない事態になる点,改めて警告する。」旨記載の「急告」と題する文書を掲示した。
(2) 平成9年12月31日,被告からの申入れによって,労使協議会が開催され,被告から後田,江種康成営業課長代理(以下「江種」という。)が,中央支部から原告ら4名が出席した。右協議会では,被告側から,営業収入向上のため,2班体制から3班体制への変更と走行キロ数による入構禁止が必要であるとの話があったが,中央支部側は,右の入構規制によって営業収入が向上することに疑問を述べ,協議は平行線のまま終了した。
(3) 平成10年1月8日,後田と江種は,原告乙原と同丙山に,「平成9年12月駅当番非当番営業実績比較」と題する書面(<証拠略>。なお,これは,駅当番については,走行距離が1乗務あたり275キロ以下の乗務員の平均収入をとり,非当番については,走行距離が1乗務あたり285キロ以上のそれをとって比較したものであって,営業収入の比較資料としては不正確なものであった。)を手渡し,「この資料のとおり,流しの営業収入が駅当番よりも大きく上回っている。」と言って,3班体制への協力を求めた。中央支部は,右数値に疑問を持ち,被告に対し,全乗務員の営業収入に関する資料の開示を求めたが,被告は中央支部所属の乗務員(35名)に関する資料だけを開示したので,これを集計すると,駅当番の営業収入が上回っている結果が出た。同月16日と17日の両日,中央支部組合員の職場集会が開催され,従前の経緯が報告されたところ,圧倒的多数が3班体制への変更に反対した。
(4) 平成10年1月18日,労使協議会が開催され,被告から江種,野口係長が,中央支部から原告ら4名が出席した。右協議会では,中央支部側が,正確な資料が提出されていないことなどを理由に,3班体制には協力できない旨を述べたのに対し,被告側は,「駅入構規制は経営権の問題であるから話し合う必要はない。1月19日から実施する。」旨を答えた。
(5) 平成10年1月18日,被告は,「1月19日以降,入構は3班編成により行う。流し番285キロ,駅番275キロを下回った場合は次回の入構を禁止する。右に違背する乗務員に対しては,就業規則に照らして厳正に処分する。」旨記載の「駅入構に関する通達」と題する文書を掲示した(本件業務命令のひとつ)。これに対し,中央支部は,同日,「労使協議による合意に基づく実施を希望する。当面労使協議の結果が出るまで2班体制で勤務する。」旨記載の「お知らせ」と題する文書を掲示し,さらに,同月19日,被告に対し,労使協議会の開催を申し入れたが,被告はこれを拒否した。同月23日,中央支部は,再度,被告に労使協議会の開催を申し入れたが,被告は,「駅入構規制問題は経営権に属する問題であるから,一切の協議の要をみない。」として,これも拒否し,同月26日には,「1月19日より会社の指示した長崎駅入構基準に基づく駅入構が図られるよう指示する。従業員が本業務命令に反した場合は,就業規則に基づき,相応の処分を科する。」旨記載の「業務命令」と題する文書を掲示した(本件業務命令のひとつ)。
前記(二)のとおり,本件労使紛争における駅入構規制の問題は団体交渉事項であるから,被告には,誠実に団体交渉に応じる義務がある。ところが,右認定の事実によると,被告は,2回の労使協議会に応じているものの,駅入構規制は経営権の問題であって団体交渉事項ではないとの認識の下に,一方的に不正確な資料を提出し,右資料に対する中央支部の疑問点には答えようとせず,2回目の労使協議会の後は,経営権をたてに取って団体交渉を拒否し続けたものであり,とうてい,被告が団体交渉に応じる義務を履行したとはいえない。そうすると,右義務に違反した上でなされた本件業務命令は,権利濫用というべきであって,無効である。したがって,原告ら4名が本件業務命令に違反したことをもって,本件就業規則の前記各規定に定める懲戒事由に該当するとはいえない。
5 以上によると,原告ら4名になされた本件懲戒処分は,いずれも無効である。原告甲野は被告の乗務員としての取扱いを求めるが,雇用契約においては,労働者の労務の提供は義務であって権利ではなく,雇用契約等に特別の定めのない限り,労働者に就労請求権はないところ,原告甲野について,右の特別の定めがあったと認め得る証拠はないから,右請求は理由がない。
二 争点3について
1 前記第二の一の「当事者」と,証拠(<証拠・人証略>)によれば,以下の事実が認められる。
(一) 平成10年1月26日の本件業務命令の後,中央支部は,同月29日,被告に対して労使協議会の開催を申し入れたが,これを拒否され,同日,代議員会において,同月末日をもって2班体制による駅入構を中止し,中央支部所属の乗務員の駅入構を,職場集会の意見集約まで控えることを決定し,同年2月4日と5日の両日,職場集会を開催した。右集会では,「従前の2班体制を継続することは駅構内乗り場での整理係に混乱をもたらすので,無用な混乱を回避するため,被告の3班体制を認めるわけではないが,その解決は労使協議会に(ママ)協議に譲り,当面,3班体制に移行する。」旨を決定した。同日,中央支部は,右と同趣旨を記載した文書を掲示し,本件業務命令に従うことになった。
(二) 被告は,遅くとも,平成9年ころにA事実を,平成8年ころにB,C各事実を(被告代表者作成の平成8年10月21日付け陳述書(<証拠略>)に右各事実の記載がある。)それぞれ知りながら,直ちに,原告甲野から事情聴取をすることはなかったし,本件懲戒処分まで,被告が,右各事実の事件内容や刑の軽重等を調査した形跡はない(被告代表者は,<証拠略>(陳述書)に,「解雇等の処断を決するにあたっては,それなりの周辺調査は可能な限り行っているのであり,それに基づく合理的判断を下しているのであります。」と記載するが,これを裏付ける証拠はない。すなわち,<証拠略>(解雇処分の背景),2(出勤停止処分の背景)について,被告代表者は,本件懲戒処分を告知する際にこれらを読み上げようとして,原告ら4名に阻止されたと供述するが,証拠(原告丁川,被告代表者)によれば,右告知の際,被告代表者は右原告らから写しの交付を求められながら,これを拒否したことが認められ,はたして,右の<証拠略>が読み上げようとした書面と同じものであるか疑問が残る。また,<証拠略>(報告書)は,本件懲戒処分後の平成10年5月に,元乗務員と後記誠和会の委員長から事情聴取した結果を記載したものにすぎない。)。
(三) 被告には,労働組合として,中央支部のほか,昭和58年ころに結成された中央タクシー従業員組合誠和会(以下「誠和会」という。)があり,平成10年5月9日当時,中央支部に約34名,誠和会に約48名がそれぞれ加入しており,その他は未組織の労働者であった。そして,被告代表者は,その陳述書(<証拠略>)に,「そもそも中央支部は,平成6年5月から6月にかけ,原告甲野の指揮の下,4波6時間にも及ぶ,名分なき前代未聞の無謀ストライキを打つのであります。これが実は,同組合にとって取返しのつかない致命傷となり,これ以降,所属組合員は大幅に減じたのみならず,新入社員からは,このような馬鹿げた組合戦略をとる組合への加入が嫌悪されることとなり,その結果,それまでの第一組合の座から転落するのであります。その意味では,同組合は原告甲野の愚かな組合扇動により既に弱体化しており,むしろ,原告甲野を同組合から排除することは,長期的にみて組合にとって良い結果をもたらすものと思われます。」と記載するように,本件労使紛争前から,中央支部及び原告甲野の組合活動を嫌忌していたことが窺われる。
(四) 原告甲野は,昭和58年2月に入社して,同年3月に本採用となり,当初は,中央タクシー労働組合(中央支部の前身)に加入したが,同年4月,同組合を脱退して誠和会に加入し,さらに,昭和62年3月には,誠和会を脱退して中央支部に加入し,平成5年9月から平成9年10月2日まで支部長を務めていた。原告丙山は,昭和62年8月に入社して,平成元年4月に本採用となり,本採用と同時に,誠和会に加入したが,平成元年11月,誠和会を脱退して中央支部に加入した。原告丁川は,昭和57年6月に入社して,同年10月に本採用となり,本採用と同時に,右の中央タクシー労働組合に加入した。そして,本件労使紛争当時,原告甲野は中央支部の教宣部長を,原告乙原は支部長を,原告丙山は副支部長を,原告丁川は書記長をそれぞれ務めていた。
2 右事実に,前記一の3のとおり,D事実は認定できないことや,前記一の4(三)で認定した本件労使紛争の経過を併せ考えると,被告は,真摯に,AないしE各事実が懲戒事由にあたるかどうかを検討することなく,専ら,中央支部の組合活動に対する嫌悪感から,中央支部を弱体化させる意図の下に本件懲戒処分を行ったものと認められるのであって,本件懲戒処分は,労働組合法7条1号(不利益取扱い),3号(支配介入)の不当労働行為にあたり,また,違法な行為として不法行為を構成する。
三 争点4について
1 非財産的損害
(一) 原告タクシー労組について
原告タクシー労組は,中央支部に対する支配介入の不当労働行為によって,団結権を侵害され,無形の損害を被ったものと認められるところ,本件労使紛争の経緯等諸般の事情を斟酌すると,右損害額は20万円が相当である。
(二) 原告ら4名について
本件労使紛争の経緯等諸般の事情を斟酌すると,原告ら4名の精神的苦痛を慰謝するには,原告甲野につき60万円,原告乙原,同丙山及び同丁川につき各30万円が相当である。
2 財産的損害
原告らは,本件懲戒処分によって被った財産的損害として,賃金及び一時金相当額を主張するが,その趣旨は,原告らが右賃金等を得られるはずであったのに,本件懲戒処分によってこれを失ったとするものと解される。そこで,この点について検討する。
(一) 賃金について
前記一の5のとおり,本件懲戒処分は無効である。そうすると,原告甲野が就労できないのは被告の責めに帰すべき事由によるものであるから,同原告は民法536条2項本文によって賃金請求権を失わない。したがって,同原告は,本件諭旨解雇処分によって,賃金相当額の損害を被ったとはいえない。また,原告乙原,同丙山及び同丁川についても,証拠(<証拠略>,原告丁川)によれば,右原告らは,本件出勤停止処分による出勤停止期間中,賃金を支給されなかったことが認められる。そうすると,右原告らは,原告甲野と同様,民法536条2項本文によって賃金請求権を失わないから,本件出勤停止処分によって,賃金相当額の損害を被ったとはいえない。
(二) 一時金について
証拠(<証拠略>,原告丁川)及び弁論の全趣旨によれば,被告における一時金は労働の対償であって,雇用契約上被告に支払義務のある「賃金(労働基準法11条)にあたることが認められる。そうすると,原告甲野は,前記賃金と同様,民法536条2項本文によって一時金請求権を失わないから,本件諭旨解雇処分によって,一時金相当額の損害を被ったとはいえない。また,原告乙原,同丙山及び同丁川についても,右各証拠によれば,一時金は,夏季と冬季の2回支給され,いずれも,一律給,勤続給,家族給からなるが,夏季については,6か月間の営業収入が234万円を超えた乗務員を,冬季については,同じく240万円を超えた乗務員をそれぞれ有資格者として,いずれにも,成績給が付加されること,一律給については,夏季で,有資格者が14万7500円であるのに対し,未資格者は5万円であり,冬季では,有資格者が18万3500円であるのに対し,未資格者は6万円であることが認められ,右事実と,(証拠略)に照らすと,右原告らは,いずれも,未資格者として支給された一時金の額と,有資格者として支給されるべき一時金の額との差額の支払いを求めるものと解される。そうすると,右差額についても,民法536条2項本文によって,右原告らには一時金請求権があるというべきであるから,右原告らは,本件出勤停止処分によって,一時金相当額の損害を被ったとはいえない。
3 弁護士費用
以上によると,原告タクシー労組に賠償すべき損害額は20万円,同甲野に賠償すべき損害額は60万円,同乙原,同丙山及び同丁川に賠償すべき損害額は各30万円となるところ,右認容額等諸般の事情を斟酌すると,不法行為と相当因果関係のある弁護士費用相当の損害額は,原告タクシー労組につき2万円,同甲野につき6万円,同乙原,同丙山及び同丁川につき各3万円と認めるのが相当である。
第四結論
以上によると,当裁判所の結論は次のとおりとなる。
1 本件懲戒処分はいずれも無効であるから,その無効確認請求は理由がある。
2 原告甲野の賃金相当損害金請求及び一時金相当損害金請求は,いずれも理由がない。
3 原告甲野の乗務員としての取扱い請求は,理由がない。
4 原告甲野の慰謝料請求は,60万円及びこれに対する本件諭旨解雇処分の日である平成10年2月14日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるが,その余は理由がない。
5 原告甲野の弁護士費用相当損害金請求は,6万円及びこれに対する本件諭旨解雇処分の日である平成10年2月14日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるが,その余は理由がない。
6 原告乙原,同丙山及び同丁川の賃金相当損害金請求及び一時金相当損害金請求は,いずれも理由がない。
7 原告乙原,同丙山及び同丁川の慰謝料請求は,各30万円及びこれに対する本件出勤停止処分の日である平成10年2月14日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるが,その余は理由がない。
8 原告乙原,同丙山及び同丁川の弁護士費用相当損害金請求は,各3万円及びこれに対する本件出勤停止処分の日である平成10年2月14日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるが,その余は理由がない。
9 原告タクシー労組の損害賠償請求は,20万円及びこれに対する本訴状送達日の翌日である平成10年3月28日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるが,その余は理由がない。
10 原告タクシー労組の弁護士費用相当損害金請求は,2万円及びこれに対する本訴状送達日の翌日である平成10年3月28日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるが,その余は理由がない。
(口頭弁論終結の日・平成12年6月20日)
(裁判長裁判官 川久保政德 裁判官 小河原寧 裁判官 伊藤寛樹)